貧困が子供に及ぼす影響
昨日は教育の日11月1日
ゆいまわるも社員研修会として、第48回精神保健福祉普及大会「貧困が子どもに及ぼす影響」(宜野湾市民会館)に参加してきました。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-606601.html
とても素晴らしい内容でしたので、以下内容を少しまとめました。
貧困の連鎖を切るために:シンポジウム
◾️黒田華さん(琉球新報編集局文化部教育班記者)
沖縄の貧困の現状:29.9%の方が貧困世帯(クラスに1人はいる状況)。具体的には必要な食べ物が買えず食糧支援・給食などで済ますなど。
取材を通して感じた、親の貧困が子供の人生にも影響を与える具体的な状況も教えてくださいました。
保育士を目指していたケース
1人の女の子。夢が保育士になることであったが、夢に向かって学校に通いたくても難しかった。奨学金で学費がまかなえても、交通費や生活費がまかなえない。祖母の介護に手が必要であったり、親戚の子供の世話をしたりと時間も持てない状況であったりする。
結局自分の夢を諦め、住み込みの介護士になる。進路も限定されても、それに対して不満に思うこともなく、そもそも自分が保育士に向かって道を選択できるとさえ感じることができない状況であった。
自分の将来像が描けなかったケース
家に食べ物がなく、給食で職を済ませる生活であった。両親も日雇いの仕事であった。
中学卒業後コンビニでアルバイトして過ごす道を選んだ。
「それは別の世界のこと。自分が選べる選択肢とは思わなかった。」
世の中に出て、少しでも学歴がある人は給与がいいことを実感し、学校に生き直したが、学費と交通費、生活費を払えず(両親も経済的に援助できず)結局学校も途中で諦めることとなってしまう。
黒田さんはケースの取材を通して、当事者の子供から現状に対する不満や怒りが聞こえてこない。声が出せない(パワーレス・ボイスレスの状況かと推測される)ことが一番衝撃的であったと話していらっしゃいました。
黒田さんの事例を聞いて・・・(仲間)
自分の人生において色々な選択肢を選んでいけることは人間の権利であるが、生活状況が選択肢にも影響与えることが浮き彫りになった事例であり考えさせられました。
◾️前城充さん(南風原町民生部こども課課長)
南風原町が解決したかったこと
子供の不登校と引きこもりをゼロにする
高校に行けない子、高校に行けても学力がついていけず不登校になるケースがいる。
→中卒に影響を与えるのは就職である。
沖縄県の高校生の不登校率・中退率は全国1
(ここには中学校の不登校が影響している!そして、さらには小学校の不登校が影響している!)
小学校・その前の不登校や行きしぶりを対応しよう!!
重要な点は①子供の孤立防止、②親の防止
<具体的な施策>
子供元気ROOM:南風原町に472名が気になることして情報が上がっている中で、緊急にサポートが必要な子は13世帯27名。その子達をサポートするための元気ROOM。ここでは通常子供たちが経験できる温かいご飯を楽しく食べることや、一緒に調理する。
保護者の多くは孤立していて、学校嫌い!行政嫌い!元気ルームのスタッフはそのどちらでもない。この立ち位置のスタッフにしかできないことがある。
子供の貧困は親の責任!?:その通りではあるが、変えたくても変えられない。
親の責任・・・でも親が生活を直ぐに変えられなかったら?それをサポートするのは『行政』の仕事。
しかし行政だけではできない!
大切なことは子供と親を孤立させることなく、生活を作って行けるチームを作ること
◾️島村聡さん(沖縄大学人文学部福祉文化学科 准教授)
<沖縄の課題>
沖縄の所得;202万円という方もいる。
▲労働生産性が低い
沖縄の行事参加率 日本最下位
沖縄の核家族率 日本10位
▲沖縄の地域性は崩れつつある。
<居場所作りについて>
子供の貧困対策として市町村にお金を入れている。支援員の給与や、居場所への補助金などで活用されている。28市町村、111箇所居場所に助成できたことは大きいことである。しかし、課題はここからだとも感じている。
具体的な課題
#1;居場所からの帰り先:居場所に来ているがこの子供の家庭(本体の居場所)はグチャグチャであったりする。果たして、ここに帰していいのか?これが次の課題である。→インタビュー調査を予定している。
#2:貧困というレッテル:居場所は誰でもこれることが重要。そうでないとここに来ている子は「貧困」としてレッテル貼られる。
#3:未来を作っていく専門家:居場所で見つかった支援が必要な子供達をどうしたらいいのか、繋げて行ける専門家が必要。
シンポジウムFreeディスカッション
Qこの問題はいつから起こっているのか?
子供が生まれる前。貧困の再生産という課題。
日本財団の調査では、これに関する損害額は日本で兆円単位、沖縄で考えると千億円単位。すごい額である!
<今後必要な取り組み>
◻︎妊婦の時から繋がれる(繋げる)仕組みが重要。
◻︎保健師が持っている情報を活用したい!(子育て中の相談相手の有無や地域の機関を活用しているかなど)出産前から行政と繋がれることでいつでも対応できる準備をしたい。(前城)
◻︎発達障害を抱えている保護者の支援:臨床心理士だけでなく、作業療法士を南風原町では取り入れていく。
Q.学校生活について期待すること
[黒田]
家庭でできない色々な学びをさせられる学校は貧困の連鎖を断ち切る重要な場所である。
しかし、学校の先生は点数を上げることや、業務が多い中、時間を取れない状況。
不登校になる前の接点が多い学校で、発見し、繋ぐことができればいいと思うが・・・。
[前城]
子供が長く生活しているのは学校である。気になると発見されることも学校が多い。
行政単位だけではなく、自治会レベルでできるシステムづくりが重要。
[島村]
一番連携したいと調査で挙がったのは小中学校、そして一番連携できないのも小中学校。
「開かれた学校」は今よく言われるがそれができない。#セキュリティーの問題など
学校や親を悪者扱いしても始まらない。
そこをどうやってチーム作りをするのかが重要。キーワードは地域・公民館(沖縄では80%が居場所として活用されている)である。ここに課題があるのは、現状では発達障害児がそこに参加すれば、パニックになってしまう。そこに専門家が入って行けるかも今後の課題。
学校がすごく変わろうとしている。一方的な指導スタイルから、子供たちの意見も引き出す授業構成になっている。その良さもあるが、それ(新しい授業システム)に参加できない子供たちとの格差が出ている。そこに専門的に関われるシステムがない。
シンポジウムを聞いて
上記内容のピンクのラインは、今後ゆいまわるが関わっていける部分だと強く感じています。会場では前城課長が
「南風原町ではこのキーとなる部分に関わっていける新たな仕組みとして、作業療法士との連携を始めている。学童への巡回相談を終え、結果を出し、9月から来年3月にかけて子育て支援にも作業療法士とのコラボを勧めている。こちらも結果が出ると思われるため、その結果を持って更に次のステップも考えている」
と発表。
ゆいまわるは前城課長と上記projectを進めているところです。
「結果を出し」と期待されていますので、全力で臨む次第です。
私達が取り組むべきことの目的が明確になり
明日からまた、目標を掲げてゆいまわるも前進していこうと思います!